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関連情報

 

(資料)             日本透析医学会ステートメント

 

1.今回の経緯と日本透析医学会の立ち位置

 今回平成31年3月7日に新聞報道された透析患者さんの透析の継続の終了(以下「透析終了」といいます。)事例をきっかけとして、公立福生病院から日本透析医学会に調査依頼があり、日本透析医学会として調査委員会を発足させました。その後、透析非導入、透析終了の事例が他にもあるとの情報に接し、全例の調査を行いました。その後、医学的・倫理的な問題に関する議論の場の必要性、多職種による議論の必要性を鑑み、外部委員を交えての「拡大倫理委員会」を発足して、慎重に議論を行って参りました。これらの経緯に関しては2019年3月25日に当学会のホームページに掲載したとおりです。

 さて、今回の報告に先立って、まず明確にしておくべきこととして日本透析医学会の立ち位置があります。一般社団法人日本透析医学会は、専ら学術研究団体であり、捜査機関でも裁定機関でもありません。したがって今回の件で日本透析医学会は、生じた事象に対する「善悪」を判断すべき立場にはなく、事実を終局的に認定したり、事実に対する法的責任を認定する権限も資格もありません。我々の立ち位置は、あくまでも多様な価値観を持つすべての患者さんに対して、「最良の医療とケアを提供するために学術研究団体として最善の努力をすること」にあります。

 したがって、今回公立福生病院の複数の症例を検討いたしましたが、それは、病院側への聞き取り調査、質問書への回答書から推論される学術的な判断です。当然のことながら個人情報や守秘義務の問題がありますため、個々の症例に関して詳細にその判断を表明することはできません。

 以上のことから今回の調査の目的は、(1) 今回きっかけとなった事例の問題点を明らかにすること、(2) 明らかにされた問題点に対して、学術的な観点から議論すること、(3) 今回の事例などを踏まえて、今後の医療のあり方、特に最良の医療を提供するための指針を策定すること、この3点としています。あくまで「今後のより良い医療に向けた方向性を明確にすること」、この方針に基づいた議論を重ねて参りました。

 このような前提にて、以下、検討結果等を申し上げたいと思います。

 

2.調査委員会調査および結果報告

 3月15日に公立福生病院を訪問し、問題となっている44歳の女性の事例を中心に調査を行いました。その後、これまでに報告されているその他の透析非導入、透析終了事例に関しても、継続して調査を行い、調査結果をもとに専ら学術的観点での議論をいたしました。なお、調査委員会の調査は公立福生病院からの要請並びに資料提出及び事情報告に基づき行われており、専ら病院から提示された資料に基づいて議論を重ねたものであり、実際の関係者とのご面談、他医療機関の調査などは行われておりません。事案全体に対する事実認定や責任判断をするための調査ではないからです。

 そこで、今回の調査結果と今後の予定を報告いたします。3月22日に、本件に関する調査委員会と本学会の常置委員会である倫理委員会との合同会議が開催され、また、5月11日に、新たに組織した拡大倫理委員会で、今回の事例から窺われる問題を議論しました。

 まず、当該病院は、慢性の透析を行う、いわゆる維持透析病院・施設ではなく、透析を導入される患者さんや他の疾患で入院する透析患者さんの透析を行うタイプの病院です。該当する患者さんたちは、当該病院で維持透析を長く行っていたわけではありません。このため、当該病院での一連の処置が終わった患者さんは、維持透析をしている施設に移ることになります。よって、今回の患者さん方が、改めて透析を希望されれば、当該病院以外に、他の施設を希望もしくは選択することは可能な状況です。わが国では、病院、診療施設の制限をすることもありません。実際に、当該患者さんも透析を終了した後、維持透析を続けていたクリニックから他院の受診を勧められ、再度当該病院を受診されているようです。

 また、当該女性患者さんは、内シャントの管理目的で当該病院を約半年間隔で受診し、この過程で当該病院より腎移植も勧められて専門外来も受診しており、透析にかわる腎代替療法の説明も受けていたとのことです。ただ、諸種の合併症を有し、各回透析時に溢水、穿刺困難などのトラブルにみまわれたとのことであり、血液透析の長期継続に対して、患者さんに苦痛や負担、困難が伴った可能性があるようです。

 さらに、本事例で重要な事情としては、血液透析時、血液の体外循環の持続的維持に不可欠な透析バスキュラーアクセス(シャント:動静脈吻合)が閉塞して再建のめどが立たず、患者さんは代替のカテーテル挿入による透析を明らかに拒否していたとの状況があったとのことです。

 以上の事情から、当時の状況では持続的な体外循環が不可能と判断され、この経緯を踏まえて、一連の透析終了の状況に至った事案ではないかと考えました。また、透析終了の実際の過程で、意思確認の方法、意思確認書の存否、多職種による説明、末期時の意思翻意の確認、呼吸苦などの苦痛緩和ケアなど、現場での状況および、一連のプロセスがどの程度なされていたかも提出資料から判明する限りにおいて、調査しました。

 次に、当該病院における、本症例以外の末期腎不全患者さんに対する透析非導入19例、および透析開始後での終了事例4例についても病院側から提出された資料を検討いたしました。(東京都の報告では透析非導入例20例、終了事例は3例でしたが今回の報告書では上記例数で確認されました。)個々の症例の詳細については、個人情報の観点からここでは触れられませんが、いずれの患者さんも、何らかの腎代替療法が必要な腎不全状態であったことは確認され、提出資料から判明する限りにおいて非導入とした場合の医学的問題点を検討しました。また、意思決定のプロセスについても、病状の説明、透析をしない場合の予後、生じうる状況など、また、患者さんの意向および、その説明がいかなる場所で、多職種の立ち合いのもとでなされたか、カルテ記載、意思確認書の有無などを調査しました。

 以上の調査資料及び調査結果を、拡大倫理委員会に付託しました。

 

3.拡大倫理委員会の見解

 調査委員会から付託された調査資料及び調査結果(以下、「調査報告」といいます。)に基づく拡大倫理委員会の検討結果は、次のとおりです。即ち、公立福生病院における「透析療法を終了して死亡に至った44歳症例」について、調査報告に基づき、(1) 透析終了を考慮することの医学的・倫理的妥当性、(2) 透析終了の意思決定プロセスの妥当性、(3) 透析終了後の緩和ケアの相当性の3点について拡大倫理委員会を開催して検討しました。今回の事例が2014年に日本透析医学会が発表した「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」に準拠しているかの判断については、本症例が終末期の症例とは判断できないことから、今回はあえて議論をしないこととしました。

 調査報告によれば、本症例は、同程度の年齢の他の透析患者さんと比較して、重篤な心・血管系合併症を有しているとのことから、また、内シャント不全を繰り返していることとカテーテルを用いた血液透析を希望していないことから、血液透析を継続するのは臨床的に困難な状況とも推測されました。これら臨床的諸事情を鑑みると、患者さんが自ら血液透析終了の意思を表明しており、その意思が尊重されてよい事案であると判断しました。

 加えて、本症例の生命維持のために他の腎代替療法を模索していたものの、本症例では患者さんの血液透析終了の意思は固く、透析終了の真摯な意思は明らかであったとのことです。

 一方、維持透析の終了は、呼吸困難等の苦痛を伴い、死亡に至る可能性があるため、意思確認書の取得や直近において反復確認することへの配慮が重要であると考えられます。これらの取得配慮によって、患者さんの意思を後日第三者が検証しやすくなりますので、ともかくも意思確認書の取得が極めて重要です。また、意思決定に至るプロセス、多職種による話し合いの内容(患者さん本人や医師以外の職種の役割や近接確認)への具体的対応を、診療録に具体的に記載することの重要性は今後十分意識されてゆかなくてはならないという点も異論のないところでした。

 ところで、本症例は死亡に至るまでに重篤な呼吸困難を伴っていることから、血液透析終了後の緩和ケア体制の構築も重要な課題です。今後の課題として、患者さんの意思は尊重されるべきですが、透析終了は苦痛を伴い死亡に至る可能性があるため十分な体制で慎重な検討を行うこと、また透析終了後も医療チームと患者・家族間で人生会議や緩和ケアプランについて十分な話し合いがなされるべきではないかと思います。

 次に、「2013年4月から2019年2月まで公立福生病院における透析非導入、透析終了に至った症例」について、調査委員会からの全症例の年齢、性別、原疾患、合併症、当該病院受診の経緯、腎機能、インフォームドコンセント(IC)の内容(倫理委員会開催の有無・参加メンバー・回数・意思確認書の有無、書式)、緩和ケア、予後等の詳細な報告を受け、これら症例における医学的・倫理的妥当性についても検討しました。

 提出された報告書によると、透析非導入や透析終了は、当該病院主治医から持ちかけられたものでなく、患者さん本人もしくは家族の意思であったとのことです。更に透析非導入に至った経緯は、臨床的・倫理的に日常的診療から大きな逸脱はなかったと考えられるものでした。またICは、多職種により構成された医療従事者と患者・家族間で複数回実施されており、適切に行われていたようです。

 一方、報告書には19例の透析非導入に至った経緯や患者・家族の意思については詳細に記載されていましたが、医療従事者側からの具体的な説明内容がどうであったかはわからないため、今後は、これもできるだけ詳細に記載するのが望ましいと思います。というのも、透析医療を受けた経験がなく、透析医療に悲観的な先入観をもつ患者さんや家族に対して透析非導入症例にICを行う際には、医療従事者側の具体的な説明内容が患者さんの最終意思決定に大きな影響を与える可能性があるため、透析非導入の利益・不利益を公平かつバランス良く、慎重に説明するのがよいと思われるからです。したがって、医療従事者はこれらを診療録にどのように工夫して記載するか、十分議論してゆくべきだと思います。報告書から透析非導入症例において、文書による意思確認書が取得されたかどうかは不明でした。透析非導入は、他の選択とは異なり高い確率で死に至る事が予想されますので、文書による意思確認書は、患者さんや家族にとって今後の治療や人生について真摯に考える機会となるため、今後は、原則として取得することが望ましいところです。

 また、4例の透析終了例においても、前記同様に意思決定に至るプロセス・多職種による話し合いの内容の対応を具体的に診療録に記載することだけでなく、医療チームと患者・家族間で人生会議や緩和ケアプランを検討し、その内容を詳細に診療録に残すことが望ましいとの意見です。

 

4.提言作成委員会について

 ところで、日本透析医学会は、厚生労働省が2007年に公表した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に準拠して作成した、「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を2014年に公表しました。日本透析医学会としては、この提言を参考にしながら、「すべての患者さんによりよい医療とケアを提供すること」を基本に考えて参りました。

 しかしながら、今回の「調査委員会」ならびに「拡大倫理委員会」の検討を踏まえて、現在の医療状況にそぐわない点があることを認識しました。また医療現場では、個々の事例に対応できる具体的な提言を必要としていることも理解しました。厚生労働省も、2018年に、新たに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を公表し、協働意思決定(shared decision making: SDM)や人生会議(advance care planning: ACP)の重要性を指摘しています。

 そこで、これまでの経過とあわせて、日本透析医学会では、従前の提言にSDM及びACP並びに終末期でない患者さんの意思決定プロセスなどを追加して改訂すべき時期に来ていると判断しました。先例が少ない領域ですが、今回、標準的なプロセスを示すことを目的として、意思決定プロセスを公表すべく「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会」(委員長: 岡田一義理事、副委員長:倉賀野隆裕理事、酒井 謙理事、土谷 健理事)を立ち上げ、新たな提言を今年度中(令和2年3月末)に作成することを予定しています。

 

5.今回の事例で明らかになったこと 

 今回の事例を検討し、我々は「医療者側の理解と、患者さん側の理解にはまだまだ大きな隔たりがありうる」ということを改めて認識しました。我々医療者側は、あくまで「最善の医療」として提供しているつもりでも、患者さんの十分な理解が得られていない場合がありうるということです。そのような不幸な状況を避けるためにも、「患者さんに判りやすい言葉で繰り返して説明を行うこと」が重要であり、それをカルテに残しておくことが必要だと感じています。この「意思確認書の取得とカルテへの記載」を実際の医療現場で行うことの重要性を、ここで重ねて強調したいと思います。また患者さんの意思は状況に応じて変化するものであり、「意思確認書の変更はいつでもできること」をきちんと説明し、決定が患者さんにとって最善なものかどうかの振り返りを繰り返し行うべきことも改めて認識する必要があります。

 また、一般の方々に透析医療に関して十分な情報が伝わっていない状況、したがってまた、一般の方々に透析医療に対する理解が深められていない状況も認識する機会となりました。3月25日のホームページでも明確にしていますが、日本透析医学会の考えとして「透析を行っている患者さんは終末期には含まないこと」を確認しています。透析医療は日々進歩しており、透析療法を行ないながら多くの患者さんが社会で活躍をされています。このような個々の患者さんの状況は、合併症などにより大きく異なっていること、また社会的な背景も異なることから、治療方針に関しては十分な話し合いのもと、患者さんの意思を尊重して決定することが重要です。

 

6.未来に向けて

 繰り返しになりますが、今回のステートメント発表の目的は、「より良い医療に向けた方向性」を明確に示すことにあります。その点を何卒ご賢察の上、我々と一緒に今後の医療のあり方を考えて頂ければと思っています。

 皆さんの未来に向けた、より良いご意見を賜ると幸甚でございます。

 

 

 令和元年5月31日

一般社団法人 日本透析医学会     

理事長 中元 秀友

調査委員会 委員長 土谷  健

拡大倫理委員会 委員長 倉賀野隆裕

 

 

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●2019年6月6日院内集会・集会宣言

 人工透析を中止して44歳の女性が死に至った公立福生病院事件は見過ごすことのできない、いや決して見過ごしてはいけない事件です。この女性(以下、Aさん)を含め透析中止による死亡が4人、透析「非導入」での死亡が20人という報道に、私たちは大きな衝撃と怒りを禁じえません。


 透析をすれば生きられる患者に、透析「非導入」や「中止」の選択肢を提示することは、「死」を誘導する行為で容認できません。Aさんの透析「再開」の意思を無視したことも許されません。

 これに関連して、公立福生病院は、4月11日付声明で、「当院では、(中略)医師が積極的に透析の見合わせの選択肢を示したことはございません」、「透析の再開を望む患者の意思に反して透析再開を行わなかった事実も一切ございません」と否定しました。
 一方で、東京都は、3月6日に公立福生病院の立入検査を行い、4月9日に文書指導を行いました。都のホームページには、患者の意思を確認する書類や患者に対して医師が適切に説明した記録等が保存されていなかったり確認できないものがあると、記載されています。

 なぜ、透析を必要とする多くの患者が死に至ったのでしょうか。そこには、透析の「非導入」や中止の「意思」を導き「再開」をしない病院の対応があったとしか考えられません。Aさんの夫は、入院後に、透析の再開を求める意思を担当医に伝えたと、言っています。私たちは、病院が患者の状態や気持ちに寄り添って、生きるための支援を行うべきだと考えます。

 

 日本透析医学会は、公立福生病院の依頼を受けて調査委員会を発足させ、福生病院が提供した報告書と資料を基に、5月31日、声明を発表しました。終末期ではない患者への透析中止は、日本透析医学会の提言(「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」)からも、厚労省のガイドライン(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」)からも逸脱しています。しかし声明では、女性は「終末期の症例ではない」から「議論しない」と判断を避ける一方で、「その意思が尊重されてよい事例」としました。

日本透析医学会は、今年中に、同学会の従前の提言に「終末期でない患者の意思決定プロセスを追加して改訂」するとしています。現行のガイドライン逸脱を判断せず、透析治療で日常生活を送っている患者へも、透析中止の基準を拡大しようというのです。

私たちは、そうした動きに強く反対します。

 

 毎日新聞の報道によると、担当外科医は「透析患者は終末期」「無益で偏った延命治療で患者が苦しんでいる。治療を受けない権利を認めるべき」と主張しています。院長も、同病院で行われている透析の中止や非導入は、「適正な手続きで倫理的だ」と述べ、胃瘻や人工呼吸器の使用についても、検討すべき、と言います。

 透析や胃瘻、人工呼吸器を使って、長年、生活を続けている人たちがいます。「病気と共に生きる」人がいて、それを支えるのが医療です。医療は人を死なせるためのものであってはなりません

 

 政府は、社会保障を切り捨てる法律や施策、政府全体の方針の中で、「尊厳死」の推進を行ってきました。そして、2018年の診療報酬の改定では、30日以内に緩和ケア病棟の患者が追い出される仕組みをつくるまでに至っています。こうした流れの中で、今回の透析中止事件も引き起こされていると考えます。
 私たちは、公立福生病院事件を究明し、障害や病気を抱える者のいのちを切り捨てるさまざまな動きに反対していきます。


 2019年6月6日
                                   院内集会参加者一同

 

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日本透析医学会への公開質問状

 

 2019年6月6日、私達諸団体、個人は、2019年3月7日に新聞報道された2018年8月16日透析中止による患者(44才)の死亡について、深い憂慮を表し、衆議院議員会館に集い、「公立福生病院事件を考える連絡会」を結成するとともに、同死亡事件に関し、2019年5月31日付で発表された一般社団法人日本透析医学会ステートメントに対し、以下の内容の質問状をお送りします。

 

 貴学会は、同ステートメントを発表する立ち位置として、「あくまでも多様な価値観をもつ全ての患者さんに対して『最良の医療とケアを提供するために学術研究団体として最善の努力をすること』にあると宣言されているところ、同ステートメントで発表された「調査委員会調査および結果報告」及び「拡大倫理委員会の見解」には、上記立ち位置に反する内容が記載されていると疑わざるをえないため、以下のとおり質問いたします。なお、対象は上記死亡事故に限定します。

 

 

1.調査委員会調査及び結果報告

 

(1) 「持続的な体外循環が不可能と判断され、この経緯を踏まえて、一連の透析終了の状況に至った事案ではないかと考えました。」について

a.「調査」及び「結果」報告とされているにもかかわらず、「不可能と判断され」「透析終了の状況に至った事案」と書かれている内容は、誰の判断を書いていますか。

公立福生病院の判断であればそのように記載すべきであるし、主語を明示しないのであれば貴学会の判断と解釈せざるをえませんが、それでよろしいか。

 

b.「体外循環が不可能」と判断されていますが、当該患者に対するカテーテル挿入による透析は可能であり、医師から提案もされています。

当該患者がそれを拒否した場合、通常の透析医療機関ではねばり強く約1時間以上もかけて透析するよう説得しますが、公立福生病院ではそのような説得はなされていませんが、その点を検討せずに「不可能」と判断されたのですか。その根拠を明らかにして下さい。

 

(2) 「透析終了の実際の過程で、意思確認の方法-(中略)-調査しました」と書かれていますが、調査の結果はなぜ書かれていないのですか。

公立福生病院入院後に、これまで患者遺族側からは患者本人が「透析再開」を病院側に訴えたと言っていますが、調査の結果はどうでしたか。

 

 

2.拡大倫理委員会の見解

(1) 本件福生病院の事例は、「終末期の症例とは判断できないことから、今回はあえて議論をしないこととした」となっています。

今回の事例は、貴学会のガイドラインに規定されていない事例ですから、一見明白にガイドラインに違反していると誰でも判断できますが、なぜ「議論」すらしなかったのですか。

 

(2) 「本症例では患者さんの血液透析終了の意思は固く、透析終了の真摯な意思は明らかであったとのことです」という「見解」を述べておられますが、この「明らかであった」と判断している人は誰ですか。

ここに主語がありませんので、ステートメントを発言している人が判断したと解釈せざるをえませんが、それでよろしいか。

「明らかであった」という判断のときに、患者本人は明確に「透析離脱を撤回できるならしたい」と訴えた事実をご存知でしたか。

「透析終了の意思は明らか」と判断した理由についてお答え下さい。

 

 

 以上、貴学会は「自らは判断者でない」などと無責任な予防線をはりながら、上記のように明確に重要な諸点について判断をしています。貴学会は「最良の医療とケアを提供するために学術研究団体として最善の努力をする」と宣言していますから、必ず、これら質問にお答え下さい。

 

 本書到達後2週間以内に必ずご回答下さい。

 

以上

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